法律の概要について
景品表示法は正式に、「不当件品類及び不当表示防止法」という名称になります。
一般的に景品表示法(景表法)といいます。1962年に施行されました。
消費者保護という観点から、商品やサービスを適正に受けるために制定されました。消費者が適正な選択ができるよう、業者らの公正な競争を目的にしています。
広告やPRの内容に、虚偽や消費者が誤解を受ける表現がないかどうかをチェックします。不当な表示、過大な景品類の提供この二つの禁止を定めています。
【景表法の景品類の定義】
顧客を誘引するための手段として
事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
物品、金銭その他の経済上の利益
景表法の監督官庁は消費者庁、公正取引委員会に加え、地方自治体の都道府県になります。
各業者の広告などに目を光らせ、違反がないかどうかをチェックします。景表法に抵触した広告などは、行政処分で措置命令を出します。
しかし、これまでは罰金の制度がありませんでした。このため、2014年の国会審議を経て「課徴金」制度で法整備を強化。
2016年4月1日から施行されます。違反があった場合、売り上げの算定率3%の課徴金が科せられます。
【景表法の課徴金】
(例)売り上げ1億円のA商品が景表法の課徴金が科せられた。
1億円×0.03=300万円
なぜ、罰金にせずに「課徴金」という聞きなれない制度にしたのか。
これには訳があります。罰金は、証券取引法や金融先物取引法で3億円が上限ですが、景表法に関連する法律では1億円です。
課徴金は売り上げの3%の算定率ですので、上限という範囲がありません。
施行前の2015年、虫よけ商品の大手4社に景表法の措置命令が下されました。この4社の売り上げは200億円を超えるため、実に6億円以上の課徴金になることが想定されます。
景表法の表示は3つに分類される
われわれ消費者が、広告などによって事業所の商品、サービス、品質、お得感などの取引条件が明記された広告を目にします。
例えば「A社にしかできない技術」(実際はB社もできる)、「C予備校のD大学への合格率ナンバーワン」(集計方法が他校と違う)、「○○産の黒毛和牛を使用」(実際は輸入牛)などです。
客観的なデータの裏付けや公的機関などの証明がなければ、不当表示になります。
実際のものよりも、著しく優良であるなどと表示するケースです。
【不当表示の3例】
1.優良誤認表示…商品・サービスの品質、規格、その他の内容についての不当表示
2.有利誤認表示…商品・サービスの価格、その他の取引条件についての不当表示
3.その他誤認されるおそれのある表示…一般消費者に誤認されるおそれがあるとして、内閣総理大臣が指定するもの「無果汁の清涼飲料水等」「商品の原産地」「消費者信用の融資費用」「不動産おとり広告」「おとり広告」「有料老人ホーム」
※出典:消費者庁のホームページから
いずれのケースも日常生活でよくありがちなパターンですね。
例えば、こんなことはありませんか。「特売品を購入するため、開店と同時に来店したが、品物がなかった」「地域で一番安い店で食品を購入したが、もっと安いところがあった」…。
悔しい思いをしますが、これまでは課徴金制度がないため、業者のやりたい放題という側面もありました。
■取引金額が大きい不当表示には細心の注意が必要
不当表示によって卵1パック100円で買ったものの、100m先の店で同サイズ95円だった。
通常なら許容できる範囲ですよね。しかし、高額な商品や金融関連では、話が違ってきます。
不動産取引で、E町の戸建販売を舞台に「90世帯の入居申し込み中」「バス停を設置予定」などという、うたい文句で購入したら…。
実際は100の分譲地の広大な敷地に、入居が10世帯以下でバス停は事業者が設置を検討している段階でした。
ちょっと寂しいどころではなく、電気・ガス・上下水道で数百円だった負担金が数万円に膨らみ、降雪地なら除雪費用の負担が1シーズン数千円から数万円に。
通勤には車を使用するハメになり、奥さん用にもう1台購入しなければならない。これだけで、数百万円の予定外の出費になります。
金融関連も同じことがいえます。
「年利○%」と大きな文字で、金融商品をアピールした広告を見て、消費者が申し込みをしました。
しかし、調べてみると、もっと高い金利でした。これは「実質年率」を明瞭に記載していなかった例です。
返済額の支払い回数によって、大きな金額を負担しなければならなくなります。
改正貸金業法によって、今でこそ減ってはいますが、不当表示の金融業者は、かなり存在しているのが実情です。
景品表示法に基づく法的措置件数の推移
消費者庁は発表している2010年度以降の景品表示法に基づく法的措置件数の推移を見てみましょう。
この中には健康食品、中古車販売、進学塾など多種多様な業種が含まれています。中には5年以上も不当表示をしていた悪質な事例もあります・
- 2010年度 56件(全国26件、都道府県30件)
- 2012年度 50件(全国28件、都道府県22件)
- 2013年度 56件(全国37件、都道府県19件)
- 2014年度109件(全国45件、都道府県64件)
- 2015年度 33件(全国30件、都道府県3件)
クレジットカード現金化と景品表示法の関係
景品表示法と言えば、クレジットカードの現金化のキャッシュバックは景品表示法の違反になるのではないかという質問をよく耳にします。
なぜ、そのように考えられているのでしょうか。
【景品表示法の「景品類」とは】
・一般懸賞~くじや、特定行為によって景品を提供するもの
・共同懸賞~商品の購入、サービスの利用に対して商店街などが共同して実施するもの
・総付景品~商品や、サービスを利用したひとにもれなく景品を提供するもの
それぞれに商品の限度額が設定されています。これは過大な景品類の提供を禁止するためです。
この3つのうち現金化のキャッシュバック方式が利用者全員がもれなく商品がもらえる「総付景品」に当たるのでは?
と言う事のようです。
総付景品の場合、商品の限度額を確認してみると、
①1000円未満の取引に対して景品は200円まで
②1,000円以上の取引に対して景品は10分2の価格までと決まっています。
現金化が景品表示法の総付景品に当たるの場合、10万円の申し込みで9万円(還元率が90%の場合)戻ってくると、景品の額が取引金額の10分2以上になり、景品表示に違反するのでは?そこで、景品表示法のQ&Aを確認してみたところ。
キャッシュバックなどの方法により,取引通念上妥当と認められる基準に従い,支払った代金の割戻しを行うことは,値引と認められる経済上の利益に該当し,景品規制の適用対象とはなりません。
(出典-消費者庁表示対策課)
上記のように景品表示法違反に該当しないものと思われます。
■まとめ
景表法は詐欺のような犯罪性が小さいため、どちらかといえば形骸化された法律でもありました。
しかし近年、食品会社やホテルなどで、確信犯的な偽装表示が相次いで発覚。これらが、景表法の厳格化の引き金になりました。
われわれ消費者も自己防衛のため、さまざまな情報を頭にインプットしていくことが必要です。
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